大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問53 (日本史B(第4問) 問3)
問題文
メモ
・近世の支配身分の人々には、将軍や大名・旗本などの武士だけではなく、公家なども含まれている。
・被支配身分の人々には、百姓や町人・職人以外にも様々な身分の人々が存在した。その中には、居住地や服装などで区別され、下位の身分とされた非人などもいた。
・様々な身分の人々は、百姓・町人のa 村・町などのように、独自の構造を持つ集団や組織を形成していた。宗教やb 芸能に携わる人々も同様に集団や組織をつくることがあった。
・非人は、江戸の場合、河岸や寺院の境内などに小屋をかけて住んだ。小屋を管理する大勢の小屋頭を4人の非人頭が統轄していた。
・江戸の非人は、牢屋の管理、堀や川の不浄物の片付け等、組織を通じ、幕府に対して様々な役を担った。その一方で、物乞いをしたり、芸能に携わったりしていた。
・c 近世後期になると、村・町などの集団・組織を通じた支配が動揺した。d 都市では、組織に属さない「野非人」と呼ばれる人々も増加し、その取締りが社会問題となった。
ユウキさんは、下線部cに関連して、支配の動揺をもたらした動きについて記した次の史料1・2を読んだ。史料1・2に関して述べた後の文X・Yについて、その正誤の組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
史料1
今般(天保七年)八月大風にて麦米高値、(中略)他国は知らず、国中一統難渋につき、露命(注1)もつなぎ難し。よって今日一千余人相談のため、石御堂(注2)に相集まり罷(まか)りあり候。十五以上六十以下の男子、取り急ぎ罷り越し、帳面に名を記すべし。もし不承知の村は、一千人の者ども押し寄せ、家々残らず打ち崩し申すべし、もし遅参の村は、真っ先に庄屋を打ち砕き候趣、申し次ぎにて言い送りける。
(『鴨の騒立』)
(注1)露命:はかない命。
(注2)石御堂:三河国滝脇村にある。
史料2
天明七丁未年五月(中略)、こわしたる跡(あと)を見たるに、破りたる米俵、家の前に散乱し、米ここかしこに山をなす。その中にひき破りたる色々の染小袖、帳面の類、破りたる金屏風、こわしたる障子唐紙(からかみ)、大家なりしに内は見え透くやうに残りなく打ちこわしけり。後に聞けば、はじめは十四・五人なりしに、追々加勢して百人計りなりしとぞ。(中略)諸方の蜂起、米屋のみにあらずとも富商人は手をくだせり。
(『蛛の糸巻』)
X 史料1によれば、一揆に加わらない村へ制裁を加えるとしている。
Y 史料2は、百姓たちが結集して庄屋や米屋を襲撃した世直し一揆について述べている。
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問53(日本史B(第4問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)
メモ
・近世の支配身分の人々には、将軍や大名・旗本などの武士だけではなく、公家なども含まれている。
・被支配身分の人々には、百姓や町人・職人以外にも様々な身分の人々が存在した。その中には、居住地や服装などで区別され、下位の身分とされた非人などもいた。
・様々な身分の人々は、百姓・町人のa 村・町などのように、独自の構造を持つ集団や組織を形成していた。宗教やb 芸能に携わる人々も同様に集団や組織をつくることがあった。
・非人は、江戸の場合、河岸や寺院の境内などに小屋をかけて住んだ。小屋を管理する大勢の小屋頭を4人の非人頭が統轄していた。
・江戸の非人は、牢屋の管理、堀や川の不浄物の片付け等、組織を通じ、幕府に対して様々な役を担った。その一方で、物乞いをしたり、芸能に携わったりしていた。
・c 近世後期になると、村・町などの集団・組織を通じた支配が動揺した。d 都市では、組織に属さない「野非人」と呼ばれる人々も増加し、その取締りが社会問題となった。
ユウキさんは、下線部cに関連して、支配の動揺をもたらした動きについて記した次の史料1・2を読んだ。史料1・2に関して述べた後の文X・Yについて、その正誤の組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
史料1
今般(天保七年)八月大風にて麦米高値、(中略)他国は知らず、国中一統難渋につき、露命(注1)もつなぎ難し。よって今日一千余人相談のため、石御堂(注2)に相集まり罷(まか)りあり候。十五以上六十以下の男子、取り急ぎ罷り越し、帳面に名を記すべし。もし不承知の村は、一千人の者ども押し寄せ、家々残らず打ち崩し申すべし、もし遅参の村は、真っ先に庄屋を打ち砕き候趣、申し次ぎにて言い送りける。
(『鴨の騒立』)
(注1)露命:はかない命。
(注2)石御堂:三河国滝脇村にある。
史料2
天明七丁未年五月(中略)、こわしたる跡(あと)を見たるに、破りたる米俵、家の前に散乱し、米ここかしこに山をなす。その中にひき破りたる色々の染小袖、帳面の類、破りたる金屏風、こわしたる障子唐紙(からかみ)、大家なりしに内は見え透くやうに残りなく打ちこわしけり。後に聞けば、はじめは十四・五人なりしに、追々加勢して百人計りなりしとぞ。(中略)諸方の蜂起、米屋のみにあらずとも富商人は手をくだせり。
(『蛛の糸巻』)
X 史料1によれば、一揆に加わらない村へ制裁を加えるとしている。
Y 史料2は、百姓たちが結集して庄屋や米屋を襲撃した世直し一揆について述べている。
- X ― 正 Y ― 正
- X ― 正 Y ― 誤
- X ― 誤 Y ― 正
- X ― 誤 Y ― 誤
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は、近世後期に起こった民衆による騒動を考えながら史料を読み解いていきます。
答えは、「X-正 Y-誤」です。
それぞれの史料を訳していきます。
内容を整理するために訳しているので、本来読み取る場合には細かく訳さなくて大丈夫です。
史料1
この度(天保7年)8月の台風にて麦や米が高騰しており、(中略)他国のことは知らないが、国内一円で困窮し、はかない命も繋ぐことが難しい状態である。よって、今日千人あまりが相談(会議)のために石御堂に集まっている。15歳以上60歳以下の男性は急いで集まり、帳面に名前を記すこと。もしこれを行わない村があれば、千人もの人が押し寄せ、家々を残らず打ち崩し、もし遅れてくる村があれば、真っ先に庄屋を打ち砕くという趣旨を、申し次ぎにて言い伝える。
→一揆を起こすための強制的な決まり事を記しています。
史料2
天明7年5月(中略)、打ち壊された跡を見ると、破れている米俵が家の前に散乱し、米が至る所に山をなして積みあがっていた。その中に引き裂かれている色とりどりの染小袖や帳面の類、破れている金屏風、壊されている障子や唐紙もあり、立派な家であるのに中が丸見えになるほど残らず打ち壊されていた。後に聞くと、はじめは14、5人であったが、次々加勢して100人になったという。(中略)各地の蜂起は、米屋だけでなく裕福な商人は手を下した。
→打ちこわしによる被害状況を記しています。
X・Yについて説明します。
[X 史料1によれば、一揆に加わらない村へ制裁を加えるとしている]
→文章の「不承知の村は~」の部分は、一揆に協力しない村への制裁(罰)の内容が記されています。
よって、正しいです。
[Y 史料2は、百姓たちが結集して庄屋や米屋を襲撃した世直し一揆について述べている]
→史料2が述べているのは、打ち壊しについての内容です。
世直し一揆は、幕末の尊王思想による農民の不安から世直しが叫ばれて起こった一揆です。
よって、誤りです。
誤りです。
正しいです。
誤りです。
誤りです。
この問題では、史料を読み取ることが重要です。
一揆や打ち壊しが分からなくても史料から読み取れるので、正確に内容を整理する力を身に付けましょう。
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02
こういった史料問題は完璧に現代語訳することが目的ではありません。
落ち着いて文章を読むと、大まかに意味が理解できますのでまずは文章にしっかり目を通してみましょう。
史料1:麦米高値(麦や米の価格が高く)、露命もつなぎ難し(はかない命を繋ぎ止めることが難しい)。一千余人相談のため、石御堂に相集まり罷りあり候(大人数が集まり、一揆の相談をしている)。もし不承知の村は、一千人の者ども押し寄せ、家々残らず打ち崩し申すべし(一揆に加わらない村へ大人数で押し寄せ、家を残らず壊していく=制裁を加える)
史料2:ひき破りたる色々の染小袖、帳面の類、破りたる金屏風、こわしたる障子唐紙(からかみ)、大家なりしに内は見え透くやうに残りなく打ちこわしけり。という一文には、壊された家に残された贅沢品の数々が書かれ、壁を壊され室内が見えてしまっている大きな家の様子が窺えます。これは都市部における打ち壊しの様子です。
そして「世直し一揆」は、幕府の権威が低下した江戸時代末期から明治初期にかけて、社会の仕組みを変えようと起こした農民たちの一揆です。
誤りです。
正解です。
誤りです。
誤りです。
世直し一揆と打ち壊しの認識の区別をつけられるようにしましょう。
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