大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問50 (<旧課程>日本史B(第3問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問50(<旧課程>日本史B(第3問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、中世の京都について調べている高校生のユウカさんとキョウさんとの会話である。この文章を読み、後の問いに答えよ。(資料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

ユウカ:中世の京都の特徴って何だろう。中世にも政治を担う権力者たちが多く住んでいたと思うんだけど、なんだか印象が薄い気がする。
キョウ:でも実際に、a 平安時代後期から鎌倉時代に政治を担った権力者たちが新しい仏教の流行に乗って平安京周辺に多くのお寺を造らせているよ
ユウカ:中世は仏教が栄えた時代と教わったけど、中国から最先端の教えがいち早く京都に伝わったのは、権力者が深く関わっていたからかな。政治の中心であったからこそ、京都に最先端の文化が伝わったってことだね。
キョウ:いくつか本を読んでみると、京都に住む権力者たちに物資が集まったことによって、京都の経済がどんどん発達していったことが強調されているよ。
ユウカ:b 室町幕府が京都の経済活動に深く関わっていたことはよく聞くなあ。
キョウ:そういえば、経済が発達したことによってc 様々な芸術や文化が発達したと書いている本もあったよ。戦乱によって荒廃した京都が富裕な商工業者たちによって復興されたように、京都の経済活動は活発だったみたい。
ユウカ:この図1は戦国時代の京都の地図だよね。黒い丸が集まっているけど、何を示しているんだろう。
キョウ:黒い丸は、戦国時代の酒屋の位置を示していて、丸の大きさによって、酒屋が負担した税の額を表しているんだよ。大きな丸が多いから、この頃の酒屋にはたくさんの銭が集まっていたんだろうね。もしかすると、黒い丸の場所の地中にはものすごい量の銭の入った容器が眠っているかもよ。
ユウカ:史料だけではなくて、発掘調査の報告書や当時の様子を描いた絵画を見ることも、中世の京都について詳しく知るための参考になりそうだね。

ユウカさんとキョウさんは、中世の京都について調べた内容を踏まえて、中世における経済の動きの特徴を模式的に示し、次の図2にまとめた。中世の財貨の動きを示した図2の矢印X~Zと、それに該当する語句a~fについて、最も適当なものの組合せを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

a  鋳造された銭
b  産出された金
c  為替
d  借上
e  代銭納
f  酒屋役
問題文の画像
  • X ― a  Y ― c  Z ― e
  • X ― a  Y ― c  Z ― f
  • X ― a  Y ― d  Z ― e
  • X ― a  Y ― d  Z ― f
  • X ― b  Y ― c  Z ― e
  • X ― b  Y ― c  Z ― f
  • X ― b  Y ― d  Z ― e
  • X ― b  Y ― d  Z ― f

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この過去問の解説 (2件)

01

最も適当な選択肢は、「X ― a  Y ― c  Z ― e」です。

 

室町時代の京都の商取引では、私鋳銭と、明で鋳造された中国銭が用いられたので、中国大陸ー日本列島間の矢印Xには「a  鋳造された銭」が当てはまります。

 

また、京都の都市・大坂の堺など地方都市・荘園間においては、割符という手形を介して遠隔地に送金し交易を行う、為替という決済方式が取られていました。したがって、矢印Yには「c  為替」が当てはまります。

 

そして、代銭納とは、武家や朝廷への年貢・現物納に代わる納税制度であり、鎌倉時代中期以降、荘民は金銭を自分たちが住む荘園の領主に納めていました。したがって、矢印Zには「e  代銭納」が当てはまります。

 

選択肢1. X ― a  Y ― c  Z ― e

正解です。

 

選択肢2. X ― a  Y ― c  Z ― f

誤りです。

f  酒屋役」は、室町幕府が酒屋に課した税のことであり、図に「室町幕府」は載っていないので、ここでは無関係です。

選択肢3. X ― a  Y ― d  Z ― e

誤りです。

室町時代初期までの高利貸し業者借上(かしあげ)といい、「d  借上」は日中間・都市間・荘園ー領主間の財貨の動きにはうまく合致しません。

選択肢4. X ― a  Y ― d  Z ― f

誤りです。

 

選択肢5. X ― b  Y ― c  Z ― e

誤りです。

中世の日本で広く流通していた明銭は銅で鋳造されており、矢印Xに「b  産出された金」は不適です。

選択肢6. X ― b  Y ― c  Z ― f

誤りです。

選択肢7. X ― b  Y ― d  Z ― e

誤りです。

選択肢8. X ― b  Y ― d  Z ― f

誤りです。

まとめ

室町時代には、貨幣が朝廷から公に発行されることなく、中国銭や私鋳銭が主に用いられましたが、そんな状況にあっても、京都の経済活動は活況を呈し、現金の代わりに割符を介して遠隔地交易を行う為替という決済方法も新たに登場しました。

 

また、荘民が現物の代わりに現金を荘園領主に納める代銭納や、室町幕府が酒屋に課す税である酒屋役などの新しい納税制度、そして、借上土倉といった高利貸し・金融業者など、日本の中世においては様々な新しい経済システム、あるいは経済主体が生まれました。

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02

最も適当なのは、
X―a(鋳造された銭) Y―c(為替) Z―e(代銭納)」 です。


中国大陸から日本へ流入したのは宋銭・明銭などの鋳造銭です(X)。

国内では京都と地方・荘園を結ぶ商取引で為替が用いられ(Y)、荘園から領主へは年貢を銭で納める代銭納が行われました(Z)。

 

 

【各矢印と語句の対応】

X:中国大陸 → 日本列島
中世の貿易(宋・元・明との日宋貿易・日明貿易)では、大量の銅銭が輸入され国内流通を支えました。

よって「鋳造された銭」a が該当します。

 

Y:京都の市場 ↔ 地方都市の市場・荘園内の市場・荘園領主
広域取引で実際の銭を運ばず決済する仕組みが発達しました。

酒屋・土倉など富裕な金融業者が扱った為替(信用手形)が代表的です。

したがってcが適切です。

 

Z:荘園 → 荘園領主
鎌倉後期以降、年貢や公事を米でなく銭で納める代銭納が一般化しました。

荘園から領主への送金を示す矢印にふさわしいのはeです。

選択肢1. X ― a  Y ― c  Z ― e

最も適当な組み合わせです。

選択肢2. X ― a  Y ― c  Z ― f

誤りです。

選択肢3. X ― a  Y ― d  Z ― e

誤りです。

選択肢4. X ― a  Y ― d  Z ― f

誤りです。

選択肢5. X ― b  Y ― c  Z ― e

誤りです。

選択肢6. X ― b  Y ― c  Z ― f

誤りです。

選択肢7. X ― b  Y ― d  Z ― e

誤りです。

選択肢8. X ― b  Y ― d  Z ― f

誤りです。

まとめ

中世日本経済の特徴は、

1. 海外銭の大量流入で貨幣経済が拡大

2. 為替制度により遠隔地間の安全な資金移動が可能に

3. 年貢の貨幣納(代銭納)が進み、領主収取も銭中心へ


これらが京都を頂点とする全国的な流通ネットワークを支え、図2の矢印X・Y・Zがその主要な動きを象徴しています。

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