大学入学共通テスト（地理歴史） 過去問
令和6年度（2024年度）追・再試験
問45 (＜旧課程＞日本史B（第3問） 問1)

まずは史料Ⅰ～Ⅲまでの現代語訳をしてみましょう。

Ⅰ：源頼朝は奥州・羽州（東北地方）の役所の税帳や土地台帳を出すように命じたが、「平泉館が焼けた時に燃えてしまいました」という報告を受けた。

Ⅱ：国ごとに平等に守護・地頭を置き、貴族の荘園であっても同じように兵糧米を徴収するべきだと、今夜、北条時政が藤原経房に伝えた。

Ⅲ：東海・東山地方（中部〜関東地方）の年貢は、従来どおりそれぞれの本家（神社・寺社や貴族）に渡すようにという宣旨が下された。頼朝の申し出によるものである。

この3つの文章に含まれるキーワードから年代を推測していきます。

Ⅰ：「平泉館が焼けた」

→1189年の奥州合戦で頼朝が奥州藤原氏を討伐する際に燃えたことが推定できます。

Ⅱ：「守護・地頭を置く」

→1185年に源頼朝が後白河法皇から「全国に守護・地頭を置く権利」 を認められました。

Ⅲ：「東海・東山地方、宣旨、頼朝の申し出」

→1183年の寿永二年十月宣旨であることが推定できます。宣旨とは、天皇の正式な命令を伝える文書のことです。この内容では、年貢について書かれていますが、実質、朝廷が源頼朝に東海・東山地方の支配権を認めた内容となります。頼朝の権力を強めた出来事でした。

従って、年代順に並び替えると「Ⅲ→Ⅱ→Ⅰ」の順番が適切です。

「Ⅲ―Ⅱ―Ⅰ」の順に並べると時代の流れが自然につながります。

【各史料の内容と年代】

Ⅲ（1183年）
内容：東海・東山の荘園年貢は「元のとおり領家に従う」ようにという宣旨です。
背景：平家追討のため後白河法皇が源頼朝を味方に引き入れ、寿永二年十月宣旨を発して東国支配を事実上許可しました。

Ⅱ（1185年）
内容：全国平均に守護・地頭を補任し、反別五升の兵糧米を徴収する旨を北条時政が朝廷に申し出た記事です。
背景：壇ノ浦の戦い直後、頼朝は守護・地頭の設置を公認させ、在地支配を全国へ広げました。

Ⅰ（1189年）
内容：頼朝が奥州・羽州の土地台帳を提出させようとしたが、平泉館炎上のとき焼失したという報告です。
背景：奥州藤原氏を滅ぼした奥州合戦（1189年）後、東北の土地調査を進める過程で出てきた記録です。