大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問46 (日本史B(第3問) 問2)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問46(日本史B(第3問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、中世社会の特色について調べている、高校生のマユさんとヨシミさんの会話である。この文章を読み、後の問いに答えよ。(史料は、一部省略したり、書き改めたりしたところがある。)

マユ:中世になると鎌倉幕府が成立するけれど、a 京都の朝廷も権力を持っているし、荘園領主も大きな権力を持っていたんだよね。
ヨシミ:だから中世には、幕府の法や朝廷の法、荘園領主の法など複数の法が併存していたみたいだね。それから戦国大名の中には分国法を制定した者もいたよね。
マユ:様々な権力がそれぞれに異なる法を出していたなんて、よく社会が混乱しなかったよね。
ヨシミ:鎌倉幕府の出した法令は主に御家人を対象としたように、それぞれの法は適用範囲が異なっていたから大丈夫だったんじゃない。
マユ:でも、b 1297年の永仁の徳政令については、御家人以外の人たちも適用を求めたことがあったようだよ。
ヨシミ:そうか、支配する権力者たちは法の適用範囲を定めたけど、支配される人たちはそれを守るとは限らなかったわけか。
マユ:それに、山城国下久世(しもくぜ)荘の名主・百姓が起こした訴訟は、c 南北朝時代の出来事だったという点も面白いね。
ヨシミ:それだけ永仁の徳政令の影響力が大きかったことが分かるよね。
マユ:中世の荘園の名主・百姓たちは、自らの利益を守るために様々な活動をしたんだね。

下線部bに関連して、永仁の徳政令(史料1)と、1345年に山城国下久世荘の名主・百姓が永仁の徳政令の適用を荘園領主の東寺に求めた申状(史料2)に関して述べた後の文a~dについて、正しいものの組合せを、後のうちから一つ選べ。

史料1
一 質券売買地(注1)の事 永仁五年三月六日
右、地頭御家人買得の地においては、本条(注2)を守り、二十か年を過ぐるは、本主(注3)取り返すに及ばず。非御家人ならびに凡下(ぼんげ)(注4)の輩(ともがら)買得の地に至りては、年紀の遠近を謂(い)わず、本主これを取り返すべし。
(「東寺百合文書」)
(注1)質券売買地:質入れや売買した土地。
(注2)本条:ここでは御成敗式目第8条のこと。
(注3)本主:もとの持ち主(売主)。
(注4)凡下:庶民。

史料2
山城国下久世荘の名主・百姓が、荘園領主の東寺に申し上げます。かつての買主の子孫と称する者が、われわれが取り戻した売却地の返還を求める訴訟を起こしました。これはとんでもない言いがかりです。なぜならば、永仁五年三月六日に鎌倉幕府が立法した徳政令と、同じく七月二十二日に幕府が六波羅探題へ送った指令書には、「非御家人ならびに凡下の輩の質券売買の地においては、年紀の遠近を謂わず、売主これを取り返すべし」と見えるからです。どうか不当な訴訟を棄却してください。
(「東寺百合文書」大意)

a  史料1は、本主が誰であっても、年限を問わず、非御家人や庶民が買い取った土地を取り戻すことができると規定したものである。
b  史料1は、本主が御家人であれば、年限を問わず、非御家人や庶民が買い取った土地を取り戻すことができると規定したものである。
c  史料2は、下久世荘の名主・百姓が、史料1の規定を読み換え、訴えを退けるよう主張したものである。
d  史料2は、下久世荘の名主・百姓が、史料1の規定に基づき、訴えを退けるよう主張したものである。
  • a・c
  • a・d
  • b・c
  • b・d

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この過去問の解説 (2件)

01

永仁の徳政令(1297年)に関して、史料より読み解く出題です。


 

・史料1より永仁の徳政令では「本条」を守ると書かれています。「本条」とは注釈の通り「御成敗式目第8条」を示しており、御家人を対象とした内容であることが読み取れます。すなわち選択肢aの「本主が誰であっても」は不適です。


 

・史料2では、「不当な訴訟を棄却してください」と締めくくられています。何が不当なのかを読み解くと、「かつての買主の子孫と称する者」が「売却地の返還を求める訴訟を起こし」たことが不当であると主張しています。史料1では御家人を対象とした内容であるにもかかわらず、史料1の規定を読み替え、自身の主張を通してきたと読み取ることができます。選択肢dの「史料1の規定に基づき」は不適です。


 

選択肢1. a・c

不適な選択肢です。

選択肢2. a・d

不適な選択肢です。

選択肢3. b・c

適切な選択肢です。

選択肢4. b・d

不適な選択肢です。

まとめ

史料1と2をそれぞれ読み解き、二つの関連性にも問うた出題形式です。史料を正確に、手早く読む判断力が求められます。

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02

永仁の徳政令(資料1)の内容と永仁の徳政令の適用を荘園領主の東寺に求めた申状(資料2)に関して述べた文の正しい組合せを選ぶ問題です。

 

●解答

正しい組合せは、b・cになります。

史料1と史料2を読んで、内容を説明している文を特定しましょう。

史料1を要約すると、「地頭・御家人に売却した土地は20年未満なら無償で変換する。非御家人・凡下(庶民)に売却した土地は、年限を問わず無償で変換する」ということです。

a.史料1は、本主が誰であっても、年限を問わず、非御家人や庶民が買い取った土地を取り戻すことができると規定したものである。

ここでいう本主とは、もとの持ち主、すなわち御家人のことですから、この説明は誤りです。

 

b.史料1は、本主が御家人であれば、年限を問わず、非御家人や庶民が買い取った土地を取り戻すことができると規定したものである。

本主は、御家人のことですから、この説明は合っています。

 

c.史料2は、下久世荘の名主・百姓が、史料1の規定を読み換え、訴えを退けるよう主張したものである。

史料1の規定の「非御家人ならびに凡下の輩の質権売買の地においては、年紀の遠近を謂わず、売主にこれを取り返すべし」とは、売主に無償で返還するという意味ですから、売却地をわれわれが取り戻すのは正当なことであって、名主・百姓は規定を読み換えているというこの説明は合っています。

 

d.史料2は、下久世荘の名主・百姓が、史料1の規定に基づき、訴えを退けるよう主張したものである。

永仁の徳政令(史料1)の、「本主」とは御家人であることを前例とした法令であり、山城国下久荘の名主・百姓が「売主これを取り返すべし」としたのは「読み換え」たものです。したがって、「資料の規定に基づき」訴えたものではありません。説明は誤りです。

 

したがって、正解は「b・c」になります。

選択肢1. a・c

配列は違っています。

選択肢2. a・d

配列は違っています。

選択肢3. b・c

正しい配列です。

選択肢4. b・d

配列は違っています。

まとめ

永仁の徳政令は、御家人が売却したり質に入れた土地を無償で変換しなさいという法令です。

一見すると御家人にとって都合の良いように思えますが、「今まで売却したり質の担保にした土地を返すから、これからは土地を売ったり担保にしてはいけません。」ということなんです。

これによって御家人はますます窮乏していきます。

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