大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
 令和6年度(2024年度)本試験
   問49 (日本史B(第3問) 問5)  
 問題文
マユ:中世になると鎌倉幕府が成立するけれど、a 京都の朝廷も権力を持っているし、荘園領主も大きな権力を持っていたんだよね。
ヨシミ:だから中世には、幕府の法や朝廷の法、荘園領主の法など複数の法が併存していたみたいだね。それから戦国大名の中には分国法を制定した者もいたよね。
マユ:様々な権力がそれぞれに異なる法を出していたなんて、よく社会が混乱しなかったよね。
ヨシミ:鎌倉幕府の出した法令は主に御家人を対象としたように、それぞれの法は適用範囲が異なっていたから大丈夫だったんじゃない。
マユ:でも、b 1297年の永仁の徳政令については、御家人以外の人たちも適用を求めたことがあったようだよ。
ヨシミ:そうか、支配する権力者たちは法の適用範囲を定めたけど、支配される人たちはそれを守るとは限らなかったわけか。
マユ:それに、山城国下久世(しもくぜ)荘の名主・百姓が起こした訴訟は、c 南北朝時代の出来事だったという点も面白いね。
ヨシミ:それだけ永仁の徳政令の影響力が大きかったことが分かるよね。
マユ:中世の荘園の名主・百姓たちは、自らの利益を守るために様々な活動をしたんだね。
マユさんとヨシミさんは、永仁の徳政令の適用に関する史料2の事例をきっかけに、さらに中世社会の特色を調べた。その結果、実力を行使して問題を解決しようとする事例があることもわかった。このような事例として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問49(日本史B(第3問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)
マユ:中世になると鎌倉幕府が成立するけれど、a 京都の朝廷も権力を持っているし、荘園領主も大きな権力を持っていたんだよね。
ヨシミ:だから中世には、幕府の法や朝廷の法、荘園領主の法など複数の法が併存していたみたいだね。それから戦国大名の中には分国法を制定した者もいたよね。
マユ:様々な権力がそれぞれに異なる法を出していたなんて、よく社会が混乱しなかったよね。
ヨシミ:鎌倉幕府の出した法令は主に御家人を対象としたように、それぞれの法は適用範囲が異なっていたから大丈夫だったんじゃない。
マユ:でも、b 1297年の永仁の徳政令については、御家人以外の人たちも適用を求めたことがあったようだよ。
ヨシミ:そうか、支配する権力者たちは法の適用範囲を定めたけど、支配される人たちはそれを守るとは限らなかったわけか。
マユ:それに、山城国下久世(しもくぜ)荘の名主・百姓が起こした訴訟は、c 南北朝時代の出来事だったという点も面白いね。
ヨシミ:それだけ永仁の徳政令の影響力が大きかったことが分かるよね。
マユ:中世の荘園の名主・百姓たちは、自らの利益を守るために様々な活動をしたんだね。
マユさんとヨシミさんは、永仁の徳政令の適用に関する史料2の事例をきっかけに、さらに中世社会の特色を調べた。その結果、実力を行使して問題を解決しようとする事例があることもわかった。このような事例として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
-   ある御家人は、一族からの所領の流出問題を解決するために、娘に譲った所領を一期分にしようとした。
-   ある荘園領主は、地頭による荘園侵略問題を解決するために、下地中分の裁定を幕府に求めようとした。
-   ある戦国大名は、隣国の大名との境争いの問題を解決するために、惣無事を受け入れようとした。
-   ある村の住人たちは、他村との用水争いの問題を解決するために、その村の用水の取り入れ口を破壊し、自分たちの耕地に優先的に用水を引こうとした。
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この過去問の解説 (3件)
01
「実力を行使して問題を解決しようとする事例」に関して読み解く問題です。
一期分とは中世社会において対象者の生涯において、所領を保有する権利のことです。与えられた権利であり、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」としては不適切です。
下地中分とは中世社会において荘園領主と地頭の間で、土地を分割し自身の所領を支配する取り決めのことです。紛争解決をするための取り決めであるため、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」としては不適切です。
惣無事とは豊臣秀吉が発した、大名間での領土紛争を停止させ、紛争を解決するための取り決め(惣無事令)に基づいた天下統一の動きです。紛争解決をするための取り決めであるため、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」としては不適切です。
「用水争いの問題」を解決するために「用水の取り入れ口を破壊する」「自分たちの耕地に優先的に用水を引こうとする」行為は「実力を行使して問題を解決しようとする事例」に該当します。
報復をするための実力行使は、集団での争いへ発展することが多くありました。時の為政者はそのような状況に触れたときに、「どのように統治していくか」を迫られ、様々な方策を講じていくこととなります。
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02
●問題のポイント
永仁の徳政令の適用に関する史料2の事例をきっかけに、実力を行使して問題を解決しようとした事例が記述された文を選ぶ問題です。
●解答
マユさん会話で「中世の荘園の名主・百姓たちは、自ら利益を守るために様々な活動をした」がヒントになります。問題の「実力を行使して問題を解決しようとした事例」ですから、自分たちの利益を守るために何らかの実力行使をした、と考えます。
したがって、実力を行使して問題を解しようとする事例は、「ある村の住人たちは、他村との用水争いの問題を解決するために、その村の用水の取り入れ口を破壊し、自分たちの高地に優先的に用水を引こうとした」という記述になります。
中世の名主や百姓は、惣(そう)という自治組織を結成して水利や入会地の管理をしていましたから、自分たちの用水を守るために実力行使に至ったと考えられます。
これは、御家人が所領がバラバラになってしまうことを防ぐために、特定の承継者が一身に引き受けるための手段と考えられますから、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」には当てはまりません。
これは、地頭による桑園侵略問題を解決するために、下地中分(各自が一定の領有権を認めること)の裁定受け入れるということは、平和的な解決方法ですから、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」には当てはまりません。
これは、豊臣秀吉が出した「惣無事令」を、隣国の大名との境争い解決のために受け入れたと考えます。これも平和的な解決方法ですから、「実力を行使して問題を解決しようとする事例」には当てはまりません。
中世の名主や百姓は、惣(そう)という自治組織を結成して水利や入会地の管理をしていましたから、自分たちの用水を守るために実力行使に至ったと考えられます。
したがって、この記述が正解です。
他人との争いを自ら戦って争いを解決することを「自力救済」といいます。この考えは中世に広く認められた考え方です。
「やられたらやり返す」という考えが強く、領地争いや仇討ちなど報復の手段とされていました。
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03
最も適当な事例は、
「ある村の住人たちは、他村との用水争いの問題を解決するために、その村の用水の取り入れ口を破壊し、自分たちの耕地に優先的に用水を引こうとした。」 です。
これは所領の相続方法を工夫し、幕府の法を活用して財産流出を防ごうとしたものです。
裁判や実力行使ではなく、あくまで法律上の手続きで問題を解決しようとしています。
地頭との対立を幕府に訴えて裁定を仰ごうとする行為で、武力ではなく公的裁判手続きに頼っています。
実力に訴える姿勢は見られません。
これは将軍や中央権力の命令に従って領土問題を収めようとするもので、互いに武力衝突を避ける方向に動いた事例です。
実力で相手を屈服させたわけではありません。
最も適当な事例です。
用水をめぐる争いで、自分たちの田に水を優先的に引くために取水口を壊した行為は、裁判や交渉ではなく直接的な力で問題を解決しようとしています。
これこそ「実力行使」の典型例と言えます。
中世の農村では、用水・入会地などをめぐる争いが頻発し、村どうしが力に訴えることも珍しくありませんでした。
この行動は、マユさんたちが注目した「法だけではなく実力で解決しようとする」中世社会の一面を表しています。
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