大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問76 (地理B(第2問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問76(地理B(第2問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

ヨシエさんたちは、地理の授業で鉄鋼業を手掛かりに、世界と日本の資源と産業の変化について探究した。この探究に関する次の問いに答えよ。

ヨシエさんたちは、日本国内での製造業の変化と地域への影響について調べた。次の図5は、日本の大都市圏のある地域における1988年と2008年の同範囲の空中写真である。図5に関することがらについて述べた文章中の下線部①~④のうちから、適当でないものを一つ選べ。

1988年時点で操業していたこの繊維工場は、後に一部が閉鎖された。この時期には、日本の繊維工業は、①豊富な労働力を求めて国内の農村部に工場が移転する傾向がみられた。閉鎖された工場の敷地の一部には、大型複合商業施設が開業し、②単独で立地するスーパーマーケットよりも広範囲から買い物客が訪れている。一方で、2008年時点でも工場の一部は残っており、その西側は、③戸建ての住宅地へと変化している。大都市圏に残った工場の中には、高付加価値製品の生産や、④製品や技術の研究開発を行う拠点に転換するものもみられる。
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この過去問の解説 (3件)

01

正答は①で、誤った記述です。

 

第二次世界大戦前の繊維・被服などの軽産業は、当時は豊富な労働力を求めて都市部に工場が多く建てられました。

しかし戦後、高度経済成長を遂げた日本は、安価な労働力を求めて海外へと工場を移してきました。

結果、日本国内には軽産業の製造拠点が縮小し、研究や開発拠点などが中心の工場が残る傾向にあります。

選択肢1. ①

間違った記述で、これが正答です。

 

国内の地方への移動ではなく、中国やベトナムなどの人件費が安い国へ工場を移しています。

選択肢2. ②

正しい記述で、誤答です。

 

例えばイオンモールやアウトレットモールのように、様々な店舗が入る巨大な複合商業施設が建てられています。

広大な工場跡地は駐車場の確保にも容易なので、このような巨大モールが進出する傾向にあります。

 

選択肢3. ③

正しい記述で、誤答です。

 

2008年の写真を見ると、工場の南東部に戸建て住宅が存在します。

縮小された工場跡地に、計画的に地割りされて作られた新興住宅地ができたと考えられます。

選択肢4. ④

正しい記述で、誤答です。

 

製造自体は海外の拠点で行い、新製品の開発・研究などのコア事業部は日本国内に残しておくパターンです。

まとめ

日本国内企業の製品が「made in Japan」から「made in China」、そして「made in Vietnam」へと変遷しています。

これに伴い、国内の工場の閉鎖、跡地利用が問題となっています。

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02

●問題のポイント

日本の大都市圏のある地域の1988年と2008年の航空写真に関する説明文を読んで、誤った説明を選ぶという問題です。

 

●解答

説明文は、製造業の変化の中でも繊維工場の閉鎖についてと、その後の土地利用についての説明です。繊維工場が閉鎖された理由と、閉鎖後の土地が住宅地や複合商業施設になっている点に着目しましょう。

繊維工場は、人や物資の集まりやすい大都市圏の近くに建てられました。繊維工場が閉鎖された理由は、土地や材料の高騰や人不足といったことが物理的な原因と、コスト削減と競争力維持のため、1980年以降の円高を背景に生産拠点の海外へ移管したり工場を売却したことも大きな要因といえます。

また、閉鎖後の土地利用については、戸建ての住宅地や大型商業施設の立地、残った工場が製品や技術の研究開発を行う拠点に転換しているのは、正しい土地利用をしているといえます。

したがって、「①豊富な労働力を求めて国内の農村部に工場が移転する傾向がみられた」という説明が違っています。

選択肢1. ①

工場の閉鎖は、土地や材料の高騰や人不足といったことが物理的な原因と、コスト削減と競争力維持のため、1980年以降の円高を背景に生産拠点の海外へ移管したり工場を売却したことも大きな要因といえます。

「①豊富な労働力を求めて国内の農村部に工場が移転する傾向がみられた」という説明文が違っています。したがってこの選択肢が正解です。

選択肢2. ②

閉鎖した工場の跡地は、商業施設や住宅が建設され、地域住民との交流を促進したりする場としても機能しています。

「②単独で立地するスーパーマーケットよりも広範囲から買い物客が訪れている」という説明は合っています。

選択肢3. ③

閉鎖した工場の跡地は、商業施設や住宅が建設されます

「③戸建ての住宅地へと変化している」という説明は合っています。

選択肢4. ④

大都市の工場跡地は広い敷地を確保できるため、大規模な研究施設を建設しやすいとして、研究開発を進めるための拠点として用いられます。

したがって「④製品や技術の研究開発を行う拠点に転換するものをみられる」という説明は合っています。

まとめ

1980年以降の大都市圏の繊維工場は、海外へ生産移転をしたため閉鎖されました。閉鎖後の土地利用は、商業施設や住宅が建設され、地域住民との交流を促進したりする場としても機能しています。

また、研究開発を進めるための拠点として用いられます。

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03

適当でない文章は、

①豊富な労働力を求めて国内の農村部に工場が移転する」です。

 

1980年代後半の日本の繊維工業は、人件費の安い海外へ生産拠点を移す動きが主流でした。

国内ではむしろ工場閉鎖や縮小が進み、農村部への積極的な移転は見られません。

選択肢1. ①

1950~60年代には農村部への移転が行われましたが、1980年代には国際競争の激化で東アジア各国へ生産を移す海外移転が中心です。

国内農村部への移転という記述は時期に合いません。

選択肢2. ②

大型複合商業施設は専門店やシネコンを併設し、広域商圏を持つのが一般的です。

単独立地のスーパーマーケットより集客範囲が広いという説明は適切です。

選択肢3. ③

空中写真を見ると、工場敷地の西側には区画整理された戸建て住宅が整然と並んでいます。

工場跡地が住宅地へ転換した例として妥当です。

選択肢4. ④

大都市圏に残る工場が、研究開発や高付加価値製造に特化して存続する動きは自動車・電機などで広く見られます。

記述は妥当です。

まとめ

1980年代後半以降の繊維業は、国内農村部ではなく海外へ生産移転を進めたため、①のみ時期的・実態的に合いません。

他の②〜④は図5の変化や当時の産業動向を的確に示しています。

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